「在宅勤務で設けるべき就業規則は何があるの?」
「在宅勤務の就業規則を作るときは何に気を付ければいいの?」
在宅勤務の導入を決定したはよいものの、どのような就業規則を設ければよいのか分からない企業も多いのではないでしょうか。
就業規則を見れば従業員がどのような行動を取るべきなのか分かるようにするため、就業規則を作るときは、実は従業員の視点に立って考えることが重要です。
本記事では、在宅勤務用の就業規則を作るポイントや注意点を紹介します。
最後に在宅勤務制度を導入するまでの流れを紹介するので、この記事を読めば準備から実施までスムーズに行えるようになりますよ!
「在宅勤務のメリット・デメリットとは?成功させるための3つの注意点」も併せてご覧ください。
1.在宅勤務に対応した就業規則を作る6つのポイント
在宅勤務に対応した就業規則を作るポイントを紹介します。
就業規則を作る際に押さえておくべきポイントは以下の6つです。
通常業務とは働き方が異なるので、在宅勤務ならではの規則を設けることが重要です。
順に説明するので、就業規則を作る参考にしてください。
(1)在宅勤務を承認する従業員の条件を決める
在宅勤務の就業規則では、まず在宅勤務を承認する従業員の条件を決める必要があります。
条件を満たした従業員のみ在宅勤務を認める体制にしなければ事業が成り立たなくなる可能性が高いです。
そのため、以下のような条件を設けることをおすすめします。
「会社は以下の条件を満たす場合にのみ、在宅勤務の申請を認める」
- 家庭や身体的な特徴により、通勤が困難と判断できる従業員である
- 従業員の業務内容が在宅勤務可能である
- 入社から1年間経過している
- その他、会社が在宅勤務をすべきと判断した場合
在宅勤務であれば働ける従業員の離職を防ぐための規則や感染症などによる緊急事態時に会社が前従業員に在宅勤務を要請できるような規則を設けておき、在宅勤務を幅広く活用できるようにしておくことが重要です。
(2)在宅勤務の期間を決める
在宅勤務の時間を決めておくこともポイントです。
在宅勤務に期限を設けなければ、オフィス勤務に復帰することを拒む従業員が増えてしまい、業務の進捗が遅れてしまう可能性があります。
そのため、以下のように在宅勤務の期限を設けて、オフィス勤務と在宅勤務のバランスを取りましょう。
- 在宅勤務の期間は、原則在宅勤務開始日より3カ月までとする
- 3カ月を超えて在宅勤務が必要な場合は、終了予定日の10日前までに期間延長の申請を行う
- いかなる理由においても、最大延長期間は1年までとする
- 在宅勤務期間中でも会社から通常業務への復帰を要請されたときは、特別な理由がない限り応じなければならない
在宅勤務の期限を設けることは事業継続において必要です。
在宅勤務から通常業務にスムーズに復帰できるように明確に期限を設けましょう。
(3)就業時間を決める
就業時間に関する決まりを設けておくべきです。
在宅勤務では従業員の労働時間を正確に把握することができません。
そのため、「在宅勤務では1日8時間労働したものとする」といったみなし労働時間を設ける必要があるでしょう。
また、深夜労働や休日労働をする従業員が現れる可能性が高いです。
上記を踏まえて、以下のような決まりを設けておきましょう。
- 在宅勤務は、原則として午前9時から開始し午後6時までの勤務とする
- 始業報告をし、業務日報の提出と同時に終業報告をする
- 指定の時間以外で勤務を行う場合は、前日までに承認をもらう
- 深夜労働や休日労働を行う場合は、事前に報告し終業時刻を記録する
給料にも影響してくるので、必ず従業員の労働時間の管理は徹底しましょう。
(4)業務上の情報の取り扱いに関する規則を決める
業務上の情報の取り扱いに関する規則も決めておきましょう。
在宅勤務ではオフィスでの勤務に比べてセキュリティ面で不安が残ります。
従業員が情報を持ち出すため、情報漏洩のリスクが高くなるからです。
在宅勤務では、業務上の情報を社外に持ち出すことが必要になりますので、情報漏えいを防ぐためにその取扱いのルールを決めておくことが必要です。
たとえば、以下のような規則を設けましょう。
- 機密情報を社外で扱う場合は上司の許可を得る
- 機密情報は自宅のみで扱えるものとする
- 機密情報の複製や目的以外の使用は禁止する
- 会社から支給されたパソコンでのみ機密情報を扱う
業務で扱う情報には社外に漏れてはならない機密情報と一般に公開されても問題ない情報があります。
就業規則では、どのような情報が機密情報に当たるのかについても明記しておきましょう。
(5)費用の負担者を決めておく
在宅勤務で発生する費用の負担は誰がするのかを決めておくことも重要です。
自宅にいる時間が長くなるので、当然ながら通信費や光熱費などの生活コストが増加します。
そのため、支出の負担を軽減するために以下のような規則を設けておくと従業員満足度が向上するでしょう。
- 通信費や光熱費の負担を軽減するために、一律3,000円支給する
- その他の費用は在宅勤務者の負担とする(会社が認めた場合は、会社が負担する)
在宅勤務に切り替えることでコストが従業員が負担するコストが増える可能性が高いです。
企業と従業員間でトラブルが起きないように、手当や福利厚生などで上手くバランスをとりましょう。
(6)在宅勤務の手続き方法を明記する
在宅勤務の手続き方法について明記しておきましょう。
感染症などの非常事態時では会社から従業員に在宅勤務を要請する場合がありますが、平時の場合は従業員が申請しなければなりません。
従業員が在宅勤務を申請できるように、就業規則に以下のような規則を明記しましょう。
- 在宅勤務申請書は、在宅勤務開始日の20日前までに上司に提出する
- 在宅勤務を申請する理由が本人や家族の病気の場合は、申請書と同時に診断書を提出する
- 会社は社内の状況を踏まえて、在宅勤務開始日や期間の変更を求めることができる
- 入社2年目以降の従業員は1年に1回、在宅勤務申請をすることができる
在宅勤務の対象となる全従業員が公平に申請できるような規則や、会社と申請者の両者が納得できる規則を設けることが重要です。
在宅勤務を社内で浸透させるためには、手続き方法が簡易的で申請しやすい環境を整えることを意識しましょう。
2.就業規則を作成するときの3つの注意点
就業規則を作成するときの注意点を紹介します。
頭に入れておくべき注意点は以下の3つです。
全ての従業員を一度に在宅勤務にするのは現実的に難しいので、在宅勤務者とそうでない人の間でなるべく不公平感を出さないように注意しなければなりません。
順に説明するので、これらの注意点を参考に就業規則を作成しましょう。
(1)在宅勤務の基本給を明確にしておく
全従業員が納得して働けるように、在宅勤務の基本給を明確にする必要があります。
在宅勤務では、オフィスで行う業務に比べると作業量が少なくなってしまいます。
そのため、通常勤務者と在宅勤務者の間には、仕事量に差が生まれる可能性が高いです。
業務量に差があるにもかかわらず給与体系が同じであれば、当然ながらオフィスで働いている従業員から不満が出るでしょう。
したがって、在宅勤務中は通常の基本給から何割か減額することを明記し、業務量における給料の不公平感をなくすようにしましょう。
(2)初期の段階では対象者を絞っておく
在宅勤務を導入する際は、いきなり全従業員を対象にするのではなく、一部の対象に絞ることをおすすめします。
在宅勤務を導入すれば、通常の業務とは仕事の流れや管理が変わるので、社内に混乱が生じる可能性が高いです。
また、コミュニケーション不足による連携の乱れやツールの問題によってさまざまな課題が発生します。
そのため、試験的に導入して段階的に対象者を増やした方が、会社の負担が減るでしょう。
初期の段階では、育児や介護、病気で家から離れられない人を対象にしてみてはいかがでしょうか。
(3)時間外労働・休日労働を原則禁止にしておく
時間外労働や休日労働を原則として禁止にしておく必要があります。
在宅勤務の場合でも、時間外労働や深夜労働、休日労働に応じて割増賃金を払わなければなりません。
就業規則に時間外労働などが禁止であることを明記しなければ、従業員が給料を多くもらうために労働時間を調整する可能性が高いです。
ただし、家庭の事情で在宅勤務にしている以上、計画通りに作業時間を確保できるわけではありません。
止むをえず時間外労働などを行う場合が考えられるので、時間外労働などを行う際は上司の承認が必要であることを明記して、さまざまな状況に対処できるようにすることをおすすめします。
従業員からの過剰な給与請求防止のため、時間外労働などを行っても事前の上司の許可や事後報告による承認がない場合は、労働時間に該当しないものとして扱うのも有効です。
3.在宅勤務導入までの流れ5ステップ
在宅勤務を導入するまでの流れを紹介します。
在宅勤務の導入を決定してから実践に至るまでの流れは以下の通りです。
在宅勤務の導入を成功させるためには、5つのステップに沿って導入することが重要です。
順に説明するので、上記の流れに沿って在宅勤務導入を進めましょう。
(1)在宅勤務導入の目的を明確にする
まずはじめに在宅勤務導入の目的を把握しましょう。
導入の目的を明確にすることで、導入効果を振り返ることができます。
また、導入目的を達成するために、対象者をどこまで認めるのか、システムやツールにどのくらいコストをかけるのかなど、導入後の計画を立てることが可能です。
在宅勤務導入を検討している企業は、まず目的を共有して企業方針を固めましょう。
(2)現状の課題を把握する
導入目的を把握したあとは、現状の課題に着目しましょう。
メリットだけでなくデメリットにも目を向け、しっかり対策をすることが在宅勤務導入を成功させるポイントです。
従業員をサポートする体制を整えるために、従業員の孤独化や業務の進捗状況の確認方法など改善すべき点が何なのか把握しておきましょう。
(3)就業規則を作成する
3つ目のステップでは、就業規則の作成をします。
前述した6つのポイントを踏まえて、混乱を少なくするための就業規則を作成してください。
この段階で社内に在宅勤務導入を通知して、従業員からの要望を取り入れるのも有効です。
導入後のトラブル防止につながるので、通常業務の就業規則とは別の規則集を作成しましょう。
(4)在宅勤務システムを導入する
在宅勤務に必要なツールやシステムを導入しましょう。
コミュニケーション不足を解消するツールや情報共有をスムーズにするツール、従業員の作業状況を把握するためのシステムなどさまざまです。
なんでも導入すればよいというわけではなく、導入目的を達成するために必要なツールを選んで導入しましょう。
なお、リモートワークに役立つビジネスチャットツールを紹介しているので、あわせてご覧ください。
(5)実践・再検討する
最後に在宅勤務を試験導入しましょう。
実際に実施してみなければ気づかない想定外のトラブルや問題が生じる可能性があります。
そのため、本格導入前に対象者を絞り試験的に導入して、課題を少しずつ改善していくことが必要です。
課題改善の取り組みと反省を繰り返しながら本格導入までつなげましょう
まとめ
在宅勤務の就業規則は、会社内の混乱を抑えながら在宅勤務を導入するために重要です。
就業規則を作るときは、対象者の条件や労働時間、申請方法などを明記しておく必要があります。
在宅勤務の就業規則を作成する際は、今回紹介した就業規則作成時の注意点や在宅勤務導入の流れを参考にしてください。
在宅勤務を前向きに検討している企業は、在宅勤務を効果的な取り組みにしましょう。